
仕事柄、カウンセラーの先生より不登校に関する講演を聞く機会がありました。
今回は、教育的課題として根強い不登校について、つぶやいていきます。
小学生の不登校の現状
不登校の定義
何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの。
文部科学省 より

不登校の人数
年度 | 不登校の人数 | 1,000人あたりの不登校児童数 |
平成20年 | 22,652人 | 3.2人 |
平成25年 | 24,175人 | 3.6人 |
平成26年 | 25,864人 | 3.9人 |
平成27年 | 27,583人 | 4.2人 |
平成28年 | 30,448人 | 4.7人 |
平成29年 | 35,032人 | 5.4人 |
平成30年 | 44,841人 | 7.0人 |
令和元年 | 53,350人 | 8.3人 |
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要 より
令和元年度のデータによると、不登校の小学生が全国に5万人以上も存在しているのが現状です。
不登校児童は、1,000人に8.3人の割合ですから1,000÷8.3=約120人に1人が不登校。
120人と言うと、1学年が3学級以上ある場合、1学年に1人は不登校の児童が存在することになります。
そして、その不登校の児童は年々増加の一途を辿っています。

これだけたくさんの不登校の子がいるんだ。
我が子や我が子の友達が不登校になったとしてもおかしくはない数値ね。
では、どうして不登校になってしまうの?
小学生の不登校 考えられる理由・原因は?
主な不登校の要因~平成30年度~

家庭環境・親子関係
不登校の要因の約55%が【家庭に係る状況】です。家庭に係る状況で考えられる項目には以下のようなものがあります。
〇両親の離婚
〇近親者が亡くなった
〇子供にとって家庭が安心できる環境ではない
(両親が不仲・子と親が不仲・コミュニケーション不足等)
〇兄弟・姉妹の不登校につられる

友達関係
小学校中学年頃になると、自分や他人を客観的に見ることができるようになってきます。
友達への同調意識や家族よりも友達を大切にする傾向が生じてきます。
故に、学校での友達関係が上手くいかない場合、大きなストレスとなります。
【友達関係が悪化するきっかけの一例】
〇きまりを守れず、周囲から浮いている
〇容姿に起因する関係悪化(太っている・肌・背丈・顔等)
〇性格に起因する関係悪化(口調が強い・秘密をばらす・約束を守れない・自分を棚に上げる等)
〇能力に起因する関係悪化(運動や学習ができない・言語の遅れや差異・行動が遅れる等)
〇周囲と異なる言動が目立つ
〇異性を巡るトラブル(好きな子が被った・性差で不公平な言動がある等)
学習が分からない
学校で過ごす時間の大半が授業での学習になります。
学習が全然分からない状態で席に座っていることは、とても苦痛です。
「分からない。」から不登校に陥ってしまうことも十分考えられます。

教員との関係
不登校の児童に「何が嫌なの?」「何かあったの?」と問い掛けると「先生が怖い。」「先生が…。」といった場合があります。可能性としては高くはありませんが、教師による体罰・不適切な言動等があるかもしれません。
環境の変化
昨今、進級の際に【持ち上がり】ではなく、【1年に1度クラス替え】をする学校が増えている傾向にあります。1年に1度のクラス替えによるメリットがある一方で、毎年子どもの環境に変化が生じるのも事実です。
担任や学級を構成するメンバーが変われば、その都度、人間関係や細かなきまりやルールも変わります。こうした環境の変化に馴染めず、負担に感じる子供もいます。
分離不安
低学年の子に見られる分離不安が不登校に繋がるケースもあります。
子が親と離れることに強い不安を感じ、家を出る際に泣きながら抱きついたり、「学校に行きたくない。」と駄々をこねたりして登校を渋る場合があります。【分離不安障害】などとも言います。
入学したての1年生で学年に1人はいる印象です。
【分離不安の子にできること】
〇親が一緒に登校する。場合によっては、学校側の許可を得て、【教室まで送る】【廊下で様子を見守る】等の対応が有効な場合もあります。
〇甘えていい時には十分に甘えさせてあげる。
〇離れる時間を少しずつ増やしていく。

怠け
不登校に関する書籍や講演で、「不登校は単なる怠けではない。」といったことが言われています。
しかし、不登校の可能性としては怠けも捨てきれません。どのような理由・原因で不登校になったのか安易に判断することは避けたいものです。
不登校の隠れた背景
発達障害や病気の可能性
不登校の要因となる対人関係や学習に関するつまずきは、子どもの特性が関係する場合があります。
【不登校の背景にあるかもしれない発達障害や病気】
自閉症スペクトラム・アスペルガー
社会性やコミュニケーション力を苦手とすることが多く、対人関係が上手くいかなかったり、トラブルが生じやすいのが特徴です。こだわりを持つ場合もあり、そのこだわりが不登校を悪化させたり、長引かせたりすることもあります。
ADHD 注意欠陥多動性障害
自己のコントロールに課題を持つ子が多いです。学校での集団生活に馴染みにくい場合があります。また、衝動性や多動性から周囲から指摘されがちとなりやすいです。
学習障害 LD
話す・聞く・読む・書く・計算する・推論する等の特定の能力の一部を極端に苦手とする特徴があります。努力や反復練習ではどうすることもできない場合が多く、子供自身が悩んでしまうことも多いです。

起立性調節障害
血圧調節の機能不全から生じる障害。
朝方、立ちくらみ・めまい・気分不良・動悸・頭痛等が生じがち。血圧調節が正常に働きはじめると体調が回復し、午後は元気といったことも多い。
心の病気
不登校の背景には、精神疾患の可能性もあるかもしれません。
心の病には、鬱病・強迫性障害・統合失調症・双極性障害等があります。
気になるようであれば、医療機関で医師の診断を受けることが必要です。
不登校の原因は一つではなく様々
親の立場からすると、我が子が不登校に陥った際には、「どうして学校行きたくないの?」「何か嫌なことがあったの?」などと、根掘り葉掘り原因を探ろうとすることでしょう。
根掘り葉掘りの質問に対し、子供は頷いたり、首を振ったり、簡単な一言で返答しがちです。
我が子が「友達と…」と言えば、「誰?〇〇くん?」「〇〇くんに嫌な事されたのね?」と状況を詳しく知ろうとさらに質問を重ねるものです。
こうした聞き取りの中で、親は「不登校の原因はこれだ!」と思い込みがちです。
しかし、不登校の原因は様々です。さまざまな感情が渦まき、不登校という形になって表れています。子供の悩みやストレスの根本的な要因を理解することが大切です。
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